Eggs&Seeds

キレイゴトと毒が目一杯詰まった法科大学院生のブログ。
いつか殻を破って何かになりたいと企みながら
頭に浮かんだ独り言をありのままに吐き出します。皆様見守ってやってください。
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フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

決して派手ではない。
でも、間違いなく良書。

壮大で美しいドキュメンタリー。

「(xのn乗)×(yのn乗)=(zのn乗)
この方程式は、nが2より大きい場合には整数解を持たない。

私はこの命題の真に驚くべき証明を持っているが、
余白が狭すぎるのでここに記すことはできない。」

プロ数学者に一泡吹かせるのが大好きなアマチュアの天才数学者、ピエール・ド・フェルマーが残した走り書き。
命題自体は誰でも理解できるほど至ってシンプル。
にも関わらず、この走り書きが三百年以上も稀代の天才達を悩ませることになる。
(正直、フェルマーはなんて性格の悪いおじさんなんだと思ったw)

この本は、数学という独特の世界観を素人にも感じられる(もちろん理解はできてないけれど、数学に人生をかける人々が何に魅せられているのか雰囲気が伝わってくる)ように平易かつ的確に紹介するとともに、現代に生きる数学者ワイルズがこの難問に挑戦し、クリアするまでの紆余曲折を綴っています。

もしかしたらそもそも偽ではないのか。
この難問に答えはあるのか。

そんな疑問が時に頭をよぎりながら
また数学者の大勢もそのような方向に流れる中
独り孤独に、静かに、闘い続けた男の物語。

一つ一つパズルのピースがはめられていく過程に興奮する。
いつのまにか、ページをめくる手が止まらなくなる。
そんな本。プロジェクトX好きな人は絶対気に入る。

この本で紹介される数学の世界は何より美しくエレガントで
文系人間をも魅了する力を持っています。
何者も寄せ付けない、完全美の世界。
無味乾燥という言葉の対極。

「数学嫌い」って言ってる人に片っ端から読ませたい。
高校までに習った数学は、全然「数学」じゃありません。
複素数平面という概念の説明一つとっても、
自分の中の固定観念が塗り替えられる感動があります。
読み終わるころには、数学のイメージが180度変わっています。


この本は、最後で今後の数学界の展望についても言及しています。
コンピュータの発達が、美しくエレガントな数学の世界を侵食しつつあるというのは興味深い話。コンピュータによって今までは考えられなかったような泥臭い根性算(ex何千通りに場合分けしてそれぞれ証明する、とか)が可能になってしまい、エレガントな証明を思いつかなくても命題が証明できてしまうケースが登場しているのだとか。コンピュータはあらゆる分野に変容をもたらしますね。

この話で、コンピュータの発達で失われていくものがあるとしたら「要領の良さ」「要領を良くする一工夫」なんじゃないかと思いました。criativityを要する発想力や創造力の類は、少なくともしばらくの間はコンピュータには遂行不可能な部分でしょう。人間がやるしかないのなら、人間はそれを行い続けるでしょうし、失われる心配はない。一方、地道な計算力や労働力それ自体もコンピュータが取って代わったところで今までと実質何も変わりはない。人間がやらなくてもコンピュータが完全に代替しているので、主体は変わっても世の中から失われることはない。

問題は、根性算のような面倒なものをコンピュータに投げてしまえば、工夫して簡単な計算方法を探そうという発想がそれこそ世の中から失われてしまうこと。コンピュータは根性算を一瞬にしてやってのけることで結果を導くための補完にはなりますが、工夫して計算するという人間の営みをそっくりそのまま代替するものではありません。にもかかわらず人間は、工夫しなくても結果が得られるなら、工夫しようとは思わなくなる。

コンピュータが人間の考える力を奪う、コンピュータに依存すると頭が衰える、というのはこういう意味なんだなと、なんだかすごく実感しました。そして漠然とした恐怖を覚えました。
「コンピュータが人間のような創造力を持つはずがない」という指摘は、コンピュータの脅威に対する反論として的はずれで、むしろそうであるからこそ脅威なんですね。人間と全く同じことがやれるわけじゃないのに、結果だけなら同じ結果を出せてしまう。


脱線しましたが、とにかくおすすめの一冊です。
数学の美に触れたい方は是非。
数学を毛嫌いしているあなたも是非。
数学を理解できなくても、魅力を感じることはできます。

余談になりますが、数にまつわる面白いトリビアもたくさん紹介されています。
印象に残ったものを一つ。

十三年蝉や十七年蝉という蝉がいるそうです。
地中に潜りっぱなしで、13年又は17年に一回だけ地上に大発生する。
神様の悪戯なのかただの偶然なのか、どちらも寿命が奇数。

これは何故か?
一つの考え方は、蝉の天敵の寿命との関係。
蝉は天敵と出会わないよう寿命を延ばした。
天敵も負けじと寿命を延ばした。
しかし両者は、両者の寿命の公倍数の年にしか顔を合わせない。
蝉の寿命が13年になった時、天敵の寿命が12年だったとしたら
両者は13×12=156年、顔を合わせないことになる。
天敵は13年の寿命に進化する前に、栄養源の蝉にありつけず絶滅してしまった!?

細かいことを考え出すとこれが真実かどうかはよく分かりませんが
確かに理屈として筋が通らないではありません。
数の神秘が自然界に及ぼす影響。深い。

そういえば本筋からは離れますが、アメリカでのエイプリルフールは、大人も大まじめに嘘をつくんでしょうか。4/1に「フェルマーの最終定理に解を見つけた」とするメールが数学者の間で出回ったり。他にも地下鉄の落書きの社会性とか、随所に文化の違いが出ててそれも面白かったです。

【追記】
面白かった発想を思い出したのでメモ。
整数は無限にある。奇数も偶数も無限にある。
奇数は整数のうち2つに1つなのだから、整数より個数が少ない感じがする。
でも無限は無限。集合の大きさを観念できない以上は、多いも少ない無い世界。
確かに。うーん。不思議。


内容(「BOOK」データベースより)
17世紀、ひとりの数学者が謎に満ちた言葉を残した。「私はこの命題の真に驚くべき証明をもっているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない」以後、あまりにも有名になったこの数学界最大の超難問「フェルマーの最終定理」への挑戦が始まったが―。天才数学者ワイルズの完全証明に至る波乱のドラマを軸に、3世紀に及ぶ数学者たちの苦闘を描く、感動の数学ノンフィクション。
 ]
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COMMENTS

posted by Nissy  at 2008/10/30 00:11
これ、すっごい面白そう***
来週くらいから時間もてあましそうなんで絶対読んでみる(^▽^*
posted by すずめっぐ  at 2008/10/31 00:34
読んだら感想教えて下さいねー☆
同じ作者の「暗号解読」を今読んでるんですが、そっちも
面白いですよ!





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